会社設立基礎知識

失敗しない会社設立のルール3「青色申告」

Cさんは名の通ったシステムエンジニア。
自分のスキルの高さを武器にシステム作成の会社を設立しました。

Cさんの技術力は業界でも評判で、大きなシステムの依頼が設立前からガンガン舞い込んで来ます。
とにかく忙しい。

会社設立もネットで見つけた司法書士の先生に頼み、全部マル投げで作りました。

「司法書士の先生は会社設立のプロだ。マル投げでお願いしておいても問題ないだろう」

そう、Cさんはこのように思っていたのです。

そして会社が出来上がったことで安心してその後の税務署や市役所への設立届けを出すのを忘れてしまったのです。

結局Cさんは設立をした後、あまりの忙しさに税理士を探す余裕がなく、税理士と顧問契約ができたのは設立してから4ヶ月が経ったときでした。

失敗しない会社設立のルール3「青色申告」

設立から1年。

設立前に受注した大型のシステム開発案件は納品まで1年以上を要する大型案件で、まだ引き渡せていません。
売上金の入金もシステムを納品後と決まっていました。

結局Cさんの会社は第1期は売上が全く上がらず、家賃や消耗品費などの経費だけが経常され赤字でフィニッシュです。

赤字額は1000万円の大赤字。
でも第2期はシステムの納品が決まっているので、1000万の黒字になる見込みです。
これらは全部Cさんの想定の範囲内のことなので、1000万という赤字も特に気にしていません。

なにより、Cさんは「繰越欠損金の損金算入」という制度を知っています。

この制度は法人で出た赤字はその次の事業年度から9年間以内の黒字と相殺できるというものです。
つまり、今期の1000万の赤字は、来期の1000万という大きな黒字と相殺になり、結局第2期も税金が発生しないのです。
Cさんはそう思っていましたので赤字も全く痛くなかったのです。

さて、はたして思惑通りにいったのでしょうか?

「今年はやはり大赤字で終わりましたね~。でも安心してください!来期は1000万の黒字が確定していますから。」

「そうですか!心配していましたよ。安心しました。ですがそうなると第2期は税金が心配ですね」

「ははは!大丈夫じゃないですか、今年の赤字の1000万は繰越ができるんでしょ。そうしたら来期の1000万の黒字と相殺してちょうど0ですね」

「Cさん、残念ですがそれは無理なんですよ。

「ええ!!なんでなんです?!」

「Cさんは会社を作った後3ヶ月以内に出さなければいけない『青色申告の承認申請書』を出していなかったですよね。

「は、はい。」

赤字を繰り越す制度は青色申告の法人にだけ認められている特典なので、期限内に青色申告の承認申請をしなかったCさんの会社は赤字を繰り越せないんですよ

「そんな・・、でも司法書士の先生が設立をしてくれているんですよ!司法書士の先生はプロなんだからミスはないでしょう??」

「はい、確かに設立の手続きは問題ありませんでした。でも税務署への届出書の提出は設立後のことなので司法書士の先生には責任はないのですよ。」

「じゃあ・・・、来期は1000万の40%の400万の税金が取られるということですか・・・・。」

「残念ながらそういうことになります」

Cさんはこの言葉を聞いて目の前が真っ暗になっていきました。

しかしこの話は実は良く耳にする話なんです。
たしかに司法書士の先生に任せておけば会社の設立は完璧です。

しかし、設立後のフォローは別問題。とくに税金面は専門外です。
そこまで司法書士の先生に求めるのは無理な話です。
ですので、設立して一安心していてはいけなかったのです。

この他にも青色申告の届出ができていないと、10万円以上30万円未満の消耗品を買ったときに、
1年で全額経費にすることが認められません。
減価償却の特例などの有利な規定を受けることができなくなってしまいます。

そもそも青色申告でない法人は社会的に信用を持ってもらえません。
銀行なども白色申告の法人は相手にしてくれないのです。
青色申告でなくなることは「百害あって一利なし」の最悪の状況なのです。

Cさんはキチンとしていれば納めなくてよかったはずの税金を、来期400万も納めることになりそうです。

~用語解説 「青色申告」~

税金の申告の仕方は「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。

「青色申告」とは、日々の取引を正しく簿記のルールにのっとって会計帳簿をつけ、
その根拠となった書類を保存している場合には、優遇措置を認めた有利な申告を認めるという制度です。

主な優遇措置には、

  1. 損失が出た場合にその損失を9年間まで繰り越すことを認め、将来に利益が出たときには利益と損失を相殺することを認める
  2. 30万円未満の資産は合計300万円まで1年で全額経費に落とすことを認める
  3. 特定の資産を取得した場合、通常よりも多くの減価償却をすることが認められる(特別償却)
  4. 税務調査で税務署が更正処分をしようとすると、その理由を付記しなければならない。

などがあります。
特に①と②は重要です。

ただし青色申告は会社が設立されてから3ヶ月以内に自分で税務署に届出書を提出しなければいけません。
もし届出ができていないと自動的に優遇措置のない白色申告になってしまいます。

ちなみに青と白の由来は、税務署から送られてくる申告書が青色申告だと青色の用紙が、
白色申告だと白色の用紙が送られてくることによってます。

~用語解説 「繰越欠損金の損金算入」~

青色申告をしている法人に認められる有利な制度で、
法人が損失を出してしまった場合に、その損失を9年間繰り越せる制度。

例えば、第1期に1000万の赤字を出し、第2期が500万の黒字、第3期も500万の黒字とすると、
第2期と第3期の500万の利益は第1期の赤字と相殺されて法人税が発生しない。

もし白色申告であれば、第2期と第3期の黒字が相殺されないので、
第2期・第3期ともに約200万円の税金が発生し、合計約400万円の法人税が発生することになります。

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